工業用ショックアブソーバ

企業は高速で機械を稼動させて生産性を向上させようとする結果、通常、ノイズの増加、機械/製品への損傷、過度の振動などが生じます。同時に、安全性と機械の信頼性が低下します。これらの問題を解決するには、さまざまな製品が一般的に使用されています。しかし、これらは効果とオペレーションの点で大きく異なります。使用される典型的な製品には、ゴム製のバンパー、バネ、シリンダクッションおよび工業用ショックアブソーバがあります。以下のビデオは、最も一般的な製品がどのように性能を発揮しているのか、なぜITT Enidineショックアブソーバがエネルギー吸収のニーズに適しているのかについて比較しています。


エネルギー吸収理論

すべての動くオブジェクトは運動エネルギーを持っています。エネルギーの量は重量と速度によって異なります。動くオブジェクトを静止させるには、動きの方向に対して正反対の力を生成する機械的デバイスを使用する必要があります。

ゴム製のバンパーとバネ -

非常に安価ですが、望ましくない反動効果を有します。インパクト時に吸収されるエネルギーのほとんどは、実際には蓄積されます。この蓄積されたエネルギーが負荷に戻ることで、リバウンドを生成し、負荷や機械に損傷を与える可能性があります。ゴム製のバンパーとバネは、最初は低い抵抗力を提供します。
これはストロークとともに増加します。


シリンダクッション-

動作範囲が制限されます。通常、システムによって生成されたエネルギーを吸収することはできません。設計上、クッションは比較的短いストロークを有し、低圧で動作するため、非常に低いエネルギー吸収となります。残りのエネルギーはシステムに移され、 衝撃負荷と振動を発生させます。



工業用ショックアブソーバ -

制御された予測可能な減速を提供します。これらの製品は、運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで機能します。具体的に言うと、油圧ショックアブソーバのピストンに加えられた運動は、流体を加圧し、制限オリフィスを通じて流れさせます。これにより、流体は急速に加熱します。熱エネルギーは、シリンダ本体に伝達され、無害の状態で大気に放散されます。


ショックアブソーバを使用する利点は以下の通りです。
  1. 機械寿命の延長 – 工業用ショックアブソーバの使用により、機械への衝撃や振動を大幅に低減できます。これにより、機械の損傷が減り、ダウンタイム・メンテナンスコストが削減され、機械寿命が向上します。
  2. より高い動作速度 – 工業用ショックアブソーバは、動くオブジェクトを制御または静かに停止させるため、機械はより高速で動作できます。このため、生産率を高めることができます。
  3. 生産品質の向上 – ノイズ、振動、損傷の影響などのモーションの有害な副作用は緩和または排除されるので、生産品質が向上します。このため、許容誤差およびフィットのメンテナンスがより容易になります。
  4. より安全な機械操作 – 工業用ショックアブソーバは、予測可能な、信頼性の高い、制御された減速を提供することによって、機械および機器オペレータを保護します。必要に応じて、特定の安全基準を満たすように設計することもできます。
  5. 競争上の優位性 – 機械は、生産性の向上、寿命の延長、メンテナンスコストの削減、より安全な操作により、価値がより高くなります。


自動車と工業用ショックアブソーバ

標準 の自動車用ショックアブソーバと工業用ショックアブソーバの間に存在する違いを理解することは重要です。自動車用は、オリフィスの偏向ビームとワッシャ方式を採用しています。工業用ショックアブソーバは、シングルオリフィス、マルチオリフィス、およびメータリングピン構成を採用しています。自動車用ではピストン速度に正比例して減衰力が変化しますが、産業用ではピストン速度の2乗に比例して減衰力が変化します。また、自動車用の減衰力はストローク位置とは無関係ですが、産業用に関連する減衰力はストローク位置に依存または非依存のいずれかの方法で設計することが可能です。




同様に重要なのは、自動車用 ショックアブソーバーは、入力されたエネルギーを一定量だけ吸収するように設計されたことです。つまり、自動車用ショックアブソーバの幾何学的な大きさでは、産業用と比較して吸収能力に限界があるのです。これは、自動車タイプの構造設計や、一般的に使用される材料の強度が低いことを観察して、明らかとなりました。これらの素材は、このタイプによく見られる低い圧力に耐えることができます。産業用ショックアブソーバは、より強度の高い材料を使用し、より高い減衰力で機能させることができます。



調整技術

適切に調整された工業用ショックアブソーバは、エネルギーを安全に散逸させ、衝撃負荷とノイズレベルを低下させます。最適な調整設定については、使用可能な調整設定グラフを参照してください。ショックアブソーバについての“見聞”は、ショックアブソーバの機能を適切に調整するのに役立ちます。





工業用ショックアブソーバを正しく調整するには、システムの作動に先立って調整ノブをゼロ(0)に設定してください。メカニズムを繰り返し、システムの減速を観察します。

減衰がソフトすぎるように見える場合(ユニットのストロークで、視覚的な減速やストロークの終了時に打撃がない場合)、次に大きい番号にインジケータを移動します。

ユニットの内部損傷を避けるために、段階的に調整を行う必要があります(例えば、0~4ではなく0~1に調整)。

滑らかな減速または制御が達成され、またシステムが減速または静止に入るときに無視できるほどのノイズが聞こえるようになるまで、調整値を増やします。

ストロークの初期に急激な減速(インパクト時のバンキング)が発生する場合は、調整値を小さくしてスムーズな減速ができるようにする必要があります。

工業用ショックアブソーバ調整つまみが調整スケールの上端に設定され、またストロークの終わりに突発的な 減速が発生する場合、より大きなユニットが必要になる場合があります。


重量または衝撃速度が変化した場合の工業用ショックアブソーバの性能

元の計算データまたは実際の 入力から条件が変わると、ショックアブソーバ’の性能に大きな影響を与え、性能の低下や性能劣化の原因となる可能性があります。ショックアブソーバの設置後の入力条件の変化は、内部損傷を引き起こすか、または少なくとも望ましくない減衰性能をもたらす可能性があります。重量または衝撃速度の変化は、以下のエネルギー曲線を調べることで確認できます。



衝撃重量の変化:再オリフィスまたは再調整を行わずに、衝撃重量を増加(衝突速度は変わらない)すると、ストロークの終わりに減衰力が増加します。図1は、この好ましくないボトムアップのピークフォースを示します。この力は、マウント構造と衝撃荷重に伝達されます。



 


衝撃速度の変化:衝撃速度が増加(重量はそのまま)すると、結果として生じる衝撃力に急激な変化が生じます。ショックアブソーバは速度に配慮した製品です。したがって、衝突速度とのクリティカルな関係については慎重な監視が必要になります。図2は、速度が増加したときに生じる衝撃力の実質的な変化を示します。元の設計データからのバリエーションまたは元のデータのエラー(誤差)により、マウント構造やシステムに損傷を与えたり、衝撃力の限度を超えた場合にショックアブソーバが故障する可能性があります。